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「ん……ありゃなんだ?」
橋の前に仁王立ちしている張飛の目に、赤黒い人馬が写る。
あわや敵襲かと張飛は蛇矛を構え、向かってくる人馬を睨みつける。
「張飛殿!張飛殿!」
かすれているが力強い声に名を呼ばれ、張飛はまん丸で大きな目をこらした。
「ありゃあ趙雲じゃねえか!?おい趙雲!」
張飛はようやく気づき、大声を上げて蛇矛を振った。
趙雲は橋のたもとにたどり着くとようやく馬を止めた。
その姿を見た張飛は、これが本当に趙雲かと驚いた。
どんな戦でも華麗に任務をこなし、これほど泥や血に塗れ、疲れ果てている姿など考えられない。
「らしくねえじゃねえか」
情に脆い張飛が声を詰まらせる。
趙雲は声を発することなくにこりと笑みを見せ、胸の阿斗が寝ているからと人差し指を口に当てる。
「おぉ……若君を救って参ったか。さあ兄者は奥にいる。あとは俺が引き受けた」
張飛は気合いを入れ直すべく自らの頬を叩いた。
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