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張飛も負けじと睨み返し、二人の間には今にも爆発しそうなほどの緊迫感が漂う。
だが、夏侯惇はくるりと張飛に背を向け戻っていった。
その悠然とした退き様は、張飛に恐れを為したなどとはとても呼べないほどであり、皆一様に息を飲んだままであった。
そこへ様子を窺っていた曹操が夏侯惇を出迎えに駆けつけた。
「惇、怖じ気づいたか」
「来ていたのか」
曹操は楽しげに夏侯惇をからかう。
しかし、笑顔はすぐに引っ込めて張飛を直視した。
「惇、見よ。足が震えておる。あれが関羽をして自分より強いと言わしめた張飛か」
曹操は未だ怖い物などないと自負していた。
暴君董卓・飛将呂布と対峙した時ですら、震えることなどなく怖いとも思わなかった。
「ふん、孟徳の方が怖じ気づいておるではないか」
夏侯惇は仕返しとばかりに曹操に言い返す。
「だが、それが正しい。あれに個で挑んでは勝てん」
ここに来てようやく夏侯惇は相好を崩した。
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