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曹軍と張飛の睨み合いが続く。
曹操はその間別の橋を探させたが、長坂橋を除く近場の橋は全て切り落とされていた。
そのまま陽が暮れ始める。
張飛の気迫は一向に衰えることなく、時々発する鬼気は曹軍の馬を怯えさせ、落馬する兵も少なくない。
張飛は舐め回すようにぐるりと曹軍を見渡すと、蛇矛を肩に担ぎ、曹軍に背を向けて橋を渡りだした。
ようやく動いた張飛に曹操は勿論、全将兵が注視する。
張飛はあくびでもしているのか腕を頭上に伸ばす。
そして何事もなかったかのように橋を渡り切り、その先の森林へと姿を消した。
「なんだ?退却したのか?」
「いや、何かの罠があるに違いない」
など、曹軍の将兵がざわめきだした。
「どうする?」
夏侯惇が曹操に短く問う。
「まだ森が騒がしい。動くな」
曹操は森に伏兵あり、と全軍に待機を命じた。
それからしばらくすると、ひょっこりと馬に乗った張飛が再び姿を現した。
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