第二部 七章

75/1749
前へ
/2656ページ
次へ
その頃信長は江陵に向けて軍を進めていた。 しばらくは長坂橋にとどまっていたのだが、虎豹騎と共に先行する蘭丸からの使者が到着し、江陵への道を鮮明に知らせてくれたためである。 他には劉備の娘二人を捕らえていることも信長に伝えられた。 信長はその二姫をうまく引き取れれば、さらに劉備へ恩を売ることができるであろう、とほくそ笑む。 だがしばらく進むと暴走とも言えるような速度で、二騎の曹兵が追走してきた。 「信長殿、どちらへ向かわれるのですか?丞相が探しておられますが」 追いついた内の一人が息も切れ切れに信長に問う。 「江陵へ向かおうと思ってな。聞けば江陵は荊州の補給基地らしいではないか。如何に精強な虎豹騎と言えど、あの兵力では心許ない」 信長が早口でまくし立てる。 「しかし丞相が呼べと……」 「今は軍事作戦中ぞ、後にせい。と曹操へ伝えよ」 信長は使者が話し終える前に己の意向を使者に告げ追い返した。
/2656ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31133人が本棚に入れています
本棚に追加