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「それはかたじけない」
曹純自身も不安を感じていたのか素直に頭を下げて感謝した。
「直に殿も参りましょう。それまでなんとしても江陵を守り抜きましょう」
「なんと、信長殿まで来て下さるとは……まさに鬼に金棒ですな」
曹純は更に深く謝意を示した。
警戒心の解けた曹純から、蘭丸は情報を引き出そうと試みた。
「此度の戦、曹純殿の戦功は比類ないものですな」
「いや。私だけの功ではござらん。皆の働きによる皆の功です」
蘭丸は感心した。
部下の功を認め、部下の働きを認める。
極普通に思えるが、功績を自分のものとする輩は少なくない。
蘭丸はこの曹純という男に好意を抱き始めていた。
だが信長に任じられているのは江陵の内偵。
蘭丸は私情を抑え込み、探りを入れ出した。
「そういえば曹純殿、此度の捕虜には劉備の娘もいると耳にしましたが」
「いますよ。失礼のないよう丁重に接してますが……」
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