第二部 七章

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「それはかたじけない」 曹純自身も不安を感じていたのか素直に頭を下げて感謝した。 「直に殿も参りましょう。それまでなんとしても江陵を守り抜きましょう」 「なんと、信長殿まで来て下さるとは……まさに鬼に金棒ですな」 曹純は更に深く謝意を示した。 警戒心の解けた曹純から、蘭丸は情報を引き出そうと試みた。 「此度の戦、曹純殿の戦功は比類ないものですな」 「いや。私だけの功ではござらん。皆の働きによる皆の功です」 蘭丸は感心した。 部下の功を認め、部下の働きを認める。 極普通に思えるが、功績を自分のものとする輩は少なくない。 蘭丸はこの曹純という男に好意を抱き始めていた。 だが信長に任じられているのは江陵の内偵。 蘭丸は私情を抑え込み、探りを入れ出した。 「そういえば曹純殿、此度の捕虜には劉備の娘もいると耳にしましたが」 「いますよ。失礼のないよう丁重に接してますが……」
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