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敵大将の身内ではあるが、幼き姫を捕虜にすることに抵抗があるのだろう、曹純の表情が曇る。
「曹操殿に引き渡ししないのですか?」
曹純は腕を組み、うーんと唸った。
「あのようなか弱き者が政争に使われるのが心苦しい」
戦場では無類の働きをするが根は優しすぎる男であるな、蘭丸はそんな弱さをあけすけに見せる曹純にますます好感を抱いた。
「ですが、渡さざるを得ないのでは?二心を疑いはしないでしょうが、心証が悪くなるのでは?」
蘭丸は親身になって、自分のことのように心配していた。
すると曹純は再び考え込み、
「出来ることなら逃がしてやりたいが……」
と、小さな声で呟く。
蘭丸も口を紡ぎ一緒になって考える。
「いっそ、逃がしてしまっては?必要とあらば私も手を貸しますゆえ」
曹純は蘭丸の言葉に目を丸くして驚いた。
「そんなことをしては、蘭丸殿も主君から叱責されよう。ならぬ」
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