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曹純は頑として首を縦に振らない。
自分の弱さからくる苦悩に蘭丸を巻き込みたくなかった。
「ならば、我らがその姫を預かるというのはいかがでしょう?」
蘭丸は糜夫人を保護していることは隠し、捕らえていると曹純に説明した。
夫人と一緒ならば、寂しさなどが紛れよう、と蘭丸が懇々と説得する。
これには頑なな曹純も心を動かした。
「とはいえ、姫たちは捕虜である。丞相と懇意の信長殿に手渡すとて、勝手に行って良いものであろうか」
絶対者であり曹純を認め、引き立ててくれている曹操に対して後ろめたい気持ちが再び曹純の態度を堅くさせる。
これ以上は無理か、と蘭丸は説得を諦めひと息ついた。
「だが幼い姫相手に監禁や見張りなどは必要あるまい」
曹純はそう言い残すと、城内の見回りに行くとその場から立ち去っていった。
蘭丸は、連れ出したくば好きにせよと暗に告げた曹純の背に深く頭を下げ、心の中で感謝した。
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