第二部 七章

1623/1724
31060人が本棚に入れています
本棚に追加
/2631ページ
「ほう、これ以上部隊はおらぬと思うておったが?」 「ええ、賈詡殿の連れて来られた者たちには少しばかり無理をさせることとなりましたが」 「ふむ、郝昭か」 司馬懿が微笑む。 「はい。あちらはもう南皮に入り、戦況は膠着しています。夏侯淵将軍を防衛と陽動に当て、郝昭と朱霊を動かしました」 その朱霊と郝昭の部隊が、司馬懿の命令通りそれぞれ色の継ぎ目へと突入していく。 「典満と許儀にも反転し攻勢に出よと伝えよ」 戦場の様子を見て司馬懿が指示を出す。 それを受け、再度司馬懿軍が優勢に立った。 「やりおるな」 謙信も司馬懿を好敵手と改めて認め、ついつい嬉しくなりほくそ笑む。 「出るぞ。定満、本陣を頼んだ」 謙信が抜剣し、直属の部隊を引き連れて進軍する。 「あそこか」 謙信の感じた一番激しく戦っているであろう場所を特定し向かった。 そこでは郝昭と典満の部隊、そして司馬孚隊の分隊が鬼小島隊と戦っていた。 鬼小島弥太郎の獅子奮迅の戦いぶりで五分五分に渡り合っていたが、郝昭が突入してからは押されつつあったのだ。 「御屋形様だ」 「おお、ついにご出陣なされたか」 など、上杉軍の将兵から歓喜の声が漏れる。 「突撃!」 謙信隊が速度をあげ、小細工なしに戦地へと突入して行った。 「あれは?」 「上杉謙信本人の模様」 「総大将自らだと?」 謙信隊の突入は優勢だった戦をひっくり返した。 司馬孚軍の分隊は後退を止む無くさせられ、典満隊も押された。謙信隊はさらに郝昭隊の後方を塞ぐように行動し、郝昭は囲まれてしまった。
/2631ページ

最初のコメントを投稿しよう!