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俺と栞の家――高宮家は、明治時代から続く、いわゆる“名家”というやつだ。
親父は今じゃ日本のトップとも言えるような大企業、高宮グループの社長だし、
母さんは華道の家元から嫁いで来たお嬢様。
俺と栞は、物心がついた時から、様々な教育を受けさせられた。
通った幼稚園も小学校も中学校も、エスカレーター式の超有名進学校だった。
栞は特に反抗もせず、親父や母さんの言うとおりの学校に通い、期待に応えて来た。
だけど、俺は違った。
小学校までは、栞と同じように反抗しなかった。
中学に進学した頃から、俺は親父と対立することが多くなった。
親父や母さんが敷いたレールの上を、ただ黙って進むのが嫌で、親父に反発した。
高校受験も、外部の高校を勝手に受験した。
それからは、顔を合わせるたびに言い争い。
二週間前の朝も、やはりそうだった。
「怜、そろそろ真剣に跡取りとしての自覚を持て!高宮家の跡取りはお前しかいないんだぞ!」
朝、起きて顔を合わせた、第一声がそれだった。
「俺は、高宮の跡を継ぐ気はねーって言ってんだろ!?」
「またそうやって……何度言えばわかるんだ!お前は長男なんだ、この家を継ぐのはお前しかいないと、いつも言っているだろう!」
親父が、俺を睨み付けて怒鳴る。
今時、長男に家を継がせるとか古臭ぇ考えだと俺は思ってる。
けど、親父は頑固だから、なかなか引き下がらない。
母さんは、いつも心配そうな顔をして見ているだけ。
俺は親父を睨んでから、朝食も食べずに家を出た。
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