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あの後、翔と校門前で別れ、俺はある場所へ向かっていた。
学校から電車で二駅離れたところに、まだ新築のマンションがある。
俺の目的地はそこだ。
マンションに着くと、俺はいつものようにエレベーターで最上階へ向かう。
別に、俺がここに住んでいるわけじゃない。
ここに住んでいるのは………俺の、姉。
エレベーターが最上階に着き、俺は一番角の部屋まで足を進める。
たぶん今の時間ならいるだろうけど、一応インターホンを押した。
少ししてから、部屋のドアががちゃりと開いた。
「まったく……また来たの?真っ直ぐ家に帰りなさいって言ってるのに…。」
どこか呆れたような様子で、姉―――栞が言った。
今年で大学二年になった姉は、現在このマンションで一人暮らししている。
俺は、ここ最近ほとんど家に帰っていない。学校が終わったら、すぐにここに来る。
「何でわざわざ二駅離れたここに来るんだか…。普通に家に帰ったほうが近いじゃない。」
玄関で靴を脱いでいる俺に、栞が言う。
「だって俺、あの家にいたくねーんだよ。親父とは顔合わせれば言い合いになるし。」
そう言ってから、俺は最後に家に帰った日……二週間前のことを思い出した。
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