10人が本棚に入れています
本棚に追加
/58ページ
雨がぽつぽつと降り出した頃、まだ若いサラリーマン風の男の携帯電話が辺りに鳴り響いていた。傘も無かった男は手にしていた黒いカバンケースを頭上に掲げ、それを雨よけにしながら駅のホームへと入っていった。濡れてしまった手をこする様に、茶色い厚手のコートで拭うと急いで電話の通話ボタンに親指をかけ耳にあてた。
「もしもし?」
男はその声を聞き、すぐに問う。
「…なんだい、ミラ。今やっと仕事が終わったところだよ。どうしたんだい?もうそろそろなのかい?」
最初のコメントを投稿しよう!