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「…やっぱ、帰るか。」
ぶらぶらと歩きながら、シャッターの降りた商店街を行く。
どうせ家に帰っても独りで何もすることがない。
裕弥には親がいない。まだ自分が幼い頃に両親を失った。ドライブを楽しんでいた車に飲酒運転の車が突っ込んだらしく、誰もが助からないと思ったようだ。
"まだ、俺が二歳の話だったな"
母親の腕の中で見つかった俺は、奇跡的に目立った外傷もなく生き延びた。
たった独り、泣くこともなく…──。
当時の記憶などない。
父や母の顔すらわからない。
親戚に引き取られてからも、周りの大人の憐れみを含んだ目に耐えきれず、何度も家を飛び出した。
今では親戚とも別居中。
「あぁ~くそ!もう何でもいいから俺の気を紛らわすもんはないのかよ!?」
商店街のど真ん中で叫び声を上げた。端から見れば、警察に通報されてもおかしくはないのだが…。
「………─。」
別に何かを期待していた訳ではないのだが、本当に何にもないと気が滅入る。
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