1116人が本棚に入れています
本棚に追加
「月が嫌な色だ。」
少女はふっとため息をつく。
脇に控えていた青年が不思議そうに首を傾げた。
「特に…いつもと同じ気がするけど?」
「ばかだなぁー、そーゆう事を言ったんじゃないよ。」
呆れたように少女はもう一度ため息をついた。
青年は困ったようにもう一度月を眺めた。空に浮かぶ青と黄金の月。双子の月は仲良く空を支配している。
「何か、嫌な予感がするよ。」
「…その割には、たのしそうだけど?」
「そう見えるだけだよ。」
そう言う少女は心底楽しそうに笑いながら月を眺めていた。
昔から変わることのない探求心と無邪気さを剥き出しにして、少女はこちらを振り返る。
「ほら、言ってるそばから始まったよ!」
少女の指差す月に目を移すと、有り得ない事が起きていた。
時計を無理矢理回すように、月が急速に重なり始める。
重なった場所は、血でも垂らしたのか真っ赤に染まり、声を発する前に、双月は1つの月となった。
最初のコメントを投稿しよう!