第一章 白の来訪者

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「──────ご注意ください。」 いつの間にか電車がホームに滑り混んでいた。 朝の通勤・通学ラッシュを終え、電車の中はガランとしている。 端の空いている席にどかりと腰を下ろし、隣に鞄を投げ出した。 ゆるりと走り出す窓からの風景を眺め、揺れに身を任せること早10分。 景色に飽きた為、前に座る40代ぐらいのおじさんが広げる週刊誌の表紙を眺めた。 《首切り殺人鬼》 おどろおどろしい字体で、表紙にどでかく見出しになっている。 そういえば、最近まで家の電気を止められていたせいで、テレビを見ていなかった。すべてのことから置いていかれた錯覚に、また腹ただしくなった。 "今時首切りなんてめんどいことするんかねぇ~" 表紙を1分程眺め、窓の外に目をやる。 流れていく家々、遊具がこじんまりと置かれた公園、人、人…──。 ガラスにぼんやりと自分が写っていることに気づき、髪の毛をいじる。 赤いメッシュの入った漆黒の髪は、上にいくほど短くワックスで固めて立たせてある。 下の方は長く、首が隠れてしまうほどだ。 着くずしたブレザーからワイシャツが汚くはみだし、ネクタイが変な位置に申し訳ない程度にある。 先輩ともめた時にでもついたのか、ホコリや砂がズボンとブレザーを白く汚していた。
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