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薄暗い、うらぶれたバー。
客もまばらで煙草と酒の混ざった独特の匂いを漂わせている
そんなバーのカウンターで一人静かにワイングラスを磨き続けている人がいた。
このバー「バーボンハウス」のマスター、ショボン。
歳は中年位、そのしょぼくれた顔がいかにもマスターという雰囲気を醸し出している
と、カラン…と戸口に付いたベルが来客を告げた。
(´・ω・)「やあ、ようこそバーボンハウスへ……おや君か、待ってたよ。はい、バーボン」
テーブルの上に静かに差し出されたバーボンを僅かに口に含み、客はカウンター席に座る
('Α`)「久しいな…元気してたかい」
(´・ω・)「まあね。君はどうなんだい?このところ悪い病気が流行っているから、気を付けないと」
客は僅かに微笑むとまたバーボンに口を付けた
まだ若く、ともすれば十代に見えかねない。しかし革のコートを羽織ったその背中は、何か重いものを背負っているように丸い
('Α`)「…で、俺を呼んだのは、まさか店の手伝いをしろっていうんじゃないだろうな?」
(´・ω・)「はは…それも頼みたいところだけど……久々に依頼が入ったんだ」
グラスを揺らす手が止まる。途端に笑いが消え、真剣な顔つきになった
('Α`)「…内容は」
(´・ω・)「ある要人の救出依頼だ。場所は、ヴィップ」
('Α`)「ヴィップだと?あそこは法もへったくれもない碌でもないとこだぞ。その依頼を出した馬鹿はどいつだ?」
ショボンは少し躊躇し、続けた
(´・ω・)「…帝国さ」
('Α`)「!!」
帝国…世界でも有数の超大国にして唯一の独裁国家だ。その帝国が依頼を出すとは…
('Α`)「訳ありか」
(´・ω・)「しかもかなり厄介なものであるだろうね…どうする?受けるかい?」
客は一気にバーボンを飲み干し、席を立つ
('Α`)「一度依頼された仕事は断らない。それが俺の流儀だ。その依頼受けよう」
(´・ω・)「…そうかい」
客の返事を聞くと、ショボンは奥から紙切れと茶色に煤けた年代物の酒瓶を持ち出してきた。
(´・ω・)「じゃあこの契約書にサインを。国家依頼だからね」
さらさらと自分の名前を書き、ショボンに渡す
('Α`)「これでいいか?」
(´・ω・)「……うん、OKだ。それからこれは僕からの餞別。寒かったら飲むといい。……幸運を。ハンター・ドクオ」
赤茶けたコートを翻し、ドクオは店を出ていった。無言の背中が感謝の意を表しているように見えた。
(´・ω・)「………幸運を」
一言だけ呟き、ショボンはグラス磨きに戻った。
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