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今からそう遠くない未来.
ある国で、新しい処刑方法が作られた.
従来よりも、死刑執行人の心の負担が少ないように.
・・・
「囚人番号○○番.お前は3日後、『試しの箱』に入れられる.」
「えっ・・・」
「試しの箱を抜けられた際には新しい名前と住所が与えられ、当局は今までの犯罪について一切追及しない.」
囚人の顔に笑顔が満ちる.
「分かりました!・・・でも、どういうものなんですか?その・・試しの箱ってのは.」
「私は何も教えられていない.」
「・・・そうですか・・・」
死刑を執行されて、生き延びた奴は、勿論、いない.
試しの箱を抜け出た奴、ってのも一度も聞いたことがない.
昔読んだ新聞では、「新しい処刑方法が作られた」としか書いていなかった.
要するに、一般市民はこの「試しの箱」について、何も知らないのだ.
3日後.
ブザーが鳴る.
「ガー・・・」
扉が開いた.囚人はその中に入っていく.
「頑張れよ」看守の声がかすかに聞こえた.
「ガー・・・バタン.」
扉が閉まった.外の音はなにも聞こえない.
前に、注意書きがある.
「この箱は迷路になっています.地面には時々、赤で大きく四角形が描かれています.それはトラップです.踏むと、あなたは死亡します.」
(続く)
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