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「『うっとうしい』とかヒドッ。お前昔はもっとすごい優しかったのにー……。彼女でもないのに弁当作って来てくれたりとか、部活の時、差し入れくれたりとか……」
ぶうっと膨らんだ顔を、ゆまの鉄拳がかすめた。
どうせ当たらないとわかっている彼女は、恐怖心をより際立てるのにこういう手を使う。
スレスレのところをかすめた目にも止まらぬ拳に、またも佑季の顔に冷や汗がどっと浮かんだ。
「……余計なこと蒸し返してんじゃないわよ、このタコ」
「は……はい、すみません……」
目に涙を浮かべた佑季は、半透明の体を半分だけ壁の中に入れ、恨めしそうにゆまを睨んでいる。
「うらめしや~~……」
「……それはリアル」
さすがにちょっと気味の悪いものを感じたので、眉を歪めて上目遣いにゆまの姿を追うその瞳から逃げるように、彼女は部屋から出た。
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『彼女でもないのに』、とかねー。
さりげに傷つくんですけど。
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