序章:『人生半壊の足音』

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2007年、山形。 寒河江市という小さな市の工業団地の真ん中にその学校はあった。 “山形県立寒河江工業高校” そこに自転車で通う、1人の少年がいた。 彼の名は《佐藤賢一》。 優しいパパとママに育てられ慎ましいながらも幸せに暮らしていた彼は、いつからか友達に“ジョナ”と呼ばれていた。 今日も「部活ダルいなぁ」とチャリをこいでいたのだが、僅かながら異変に気付いた。 「車の通りが無い……」 元々人通りの少ない道路なのだが、今日は異様な静寂があった。 信号が赤に変わる。横断歩道で止まるが、どうせ車来ないんだし進もうとペダルに足を掛けた時、爆発音が耳をつんざいた。 「なっ!?」 ゲームやアクション映画で慣れ親しんだ音だったが、そのせいか現実の物とは思えない。 振り返り、目を疑った。 先程通った歩道を中心に周りの建物が吹っ飛び、瓦礫が散らばっている。 「……マジ?」 信号が青になっていた。 しかし目は完全に後ろに奪われていた。 突如、装甲車が数台走ってくる。中から黒い武装をしてアサルトライフルを構えた危ない連中が降りてくる。 「テロリスト!?」 自転車から降りて逃げようとして、向こうからも装甲車が走ってきた。 焦る、心拍数が上がるのを実感している。 後方にライフルを所持した黒の集まり。 前方の装甲車から降りたのは白い武装の集まり。 2007年、6月。 佐藤賢一は一般人としての常識を超越した次元に入り込む事となった。
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