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どうすりゃいいんだよ……
佐藤賢一は焦っていた。
太腿に痛みを感じながら。
現在彼は黒の集まりの装甲車の中にいる。
展開はこうだった。
自分を挟み睨み合う白と黒。
突如激しい撃ち合いが始まり、流れ弾に被弾してしまったのである。
運良く致命傷では無かったのだが、燃える様な痛みに気が遠くなってゆく。
その時何者かに担がれ、黒い装甲車に入れられたのだった。
彼が目を覚ました時、太腿は応急処置を受けた後だった。
違和感は無い、恐らく弾丸は取り除かれているのだろう。
「目が覚めたか」
声がした。振り返ると、同じクラスのある人物がいた。
「丹野…君だっけ?」
入学からまだ2ヶ月、あまり親しく無いクラスメイトの名は曖昧だった。
今回も彼の下の名が思い出せなかった。
「あぁ、丹野貴博だ。太腿は大丈夫か?」
大人びた喋り方をする丹野貴博。
佐藤賢一は丹野貴博に大して“あまり目立たない人物”という印象があったので、意外だった。
「一応。……そういえばさっきのテロは!?」
「テロじゃない、組同士の戦いだ。
……覚えてるのかさっきの事を。すまないけど君には捕虜になって貰う。」
「はぁっ!?」
意味が分からなかった。いきなり銃撃戦に巻き込まれ気絶して、目が覚めたら捕虜だって?
「ふざけ…」
「ふざけて無い。見られたからには仕方無いんだ。もし目が覚めなかったなら海に捨てるか山に埋めるかして口封じしていた。
目が覚めても忘れていれば良かったんだがな。
諦めろ、運の悪さを後悔して働くんだな」
感情の籠もらない口調でそう話した丹野貴博。
佐藤賢一は最初は信じられなかったが、周りにある銃器の山に信じざるを得なかった。
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