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「巽さん、大学を……院生を辞めちゃって。青年海外協力隊だっけかな。教員やるって、ネパールだかチベットだかに行っちゃって、連絡取れないから」
嘘ではない。
四年前の丁度今頃。
冬の気配が差し始めた頃。
家庭教師最後の授業を終えてから、僕は彼から直接それを聞かされた。
そして、その言葉通り、巽さんは大学を去り。
師走の慌ただしいなか、僕とヨシノさんに見送られ、機上の人となった。
赴任地が紛争の絶えない土地だけに皆、心配したけれど、彼の決意は変わらなかった。
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