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蓋と胴に螺鈿(らでん)を嵌め込んだ銀色のそれは、冬の陽射しの中、きらきらと光の粒を弾いて揺れた。
『……ライターって。ふう君。キミね、まだ16でしょうよ』
『誕生日プレゼントは好きなもん買ってやるって、巽さん言ったじゃん』
『いや、そりゃ言いましたけど。うーん……』
ガキのチョイスにしては、不釣合いなそれを手に取り。
巽さんは、眉を段違いに捻って、明らかに困った顔で僕を見て笑い。
(……けど。巽さん。結局、買ってくれたよね、コレ)
あんなにねだったというのに、綺麗だったのは半年ほどで。
度重ねたやんちゃに螺鈿はあちこちが欠けてしまって。
今は傷だらけになったライターを見つめ。
(こんなん選んで……マジ、生意気だったスねぇ)
僕は独り苦笑し、煙草に火を点けた。
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