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   忘れた筈の、  消え去った筈の、  遠く封印した筈の  ……苦い、記憶。  僕は。  揺り動かさかれて過去に引き戻される度に。  僕はその度ごとに、僕自身を抱き締める。   独りベッドに蹲って、鮮やかに甦る様々な感覚を反芻し、嗚咽し、だけど、どうしようもないから。  だから。  だから、僕は、ただ独り、声を殺し、自分で自分を抱き締める。  いつも  いつも  いつも  いつも  いつの夜も。  唇から震えの消えるまで。  
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