和訳集

小式部の内侍

和泉式部は、保昌の妻だったので丹後にともに下向していたときに、京では歌合があったので、小式部の内侍が歌人として選ばれて歌を詠んだのを、定頼の中納言が、ふざけて、小式部の内侍に、『丹後へ遣わした人はもう戻ってきましたか？』と言って、局の前を通り過ぎなさったのを、小式部の内侍は、御簾から半分出て、直衣の袖を引き止めて、

大江山いくのの道の遠ければ まだふみもみず天の橋立

と詠みかけた。
定頼の中納言は思いがけないことに驚きあきれて、『これはどうしたことか。』と言って、反歌も詠むことも出来ず、袖を振り切ってその場からお逃げになった。
小式部は、このことがきっかけで、歌人としての世間の評判がててきたそうだ。