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涼介
『え⁉なんで親父の名前を⁉』
友田
『やっぱりそやったんか…。キャバクラで見た時、暗がりで見た顔が、野村さんそっくりやったでな…。まさか思て女の子に名前聞いたら、野村言うやないか…。びっくりしたわ。実はな…俺な、若い頃…親父さんと同じ会社におったんや。』
涼介
『そうなんでっか⁉』
友田
『あぁ…親父さんはバリバリ仕事こなす男やったで…?エラいシゴかれたけど…めっさ可愛がってくれたな…。俺が会社辞める言うた時も、一言…頑張れよ…言うてな…。それから…丁度この会社を興す直前に…親父さんは死なはった…。親父さんは…俺の師匠みたいなもんや。この仕事の基礎を全て教えてくれたお人やったからな…。ほーか………野村さんの…。』
涼介
『…親父は…たまに帰って来ては…飲んだくれて寝てました。そんな親父が…俺は嫌いでした。ガキん頃は、周りのみんなは旅行や遊園地や行っとるのに、俺には、そんな記憶ありません。クリスマスも…誕生日も…お袋と、妹だけで過ごしてました。そんな親父を…恨みさえしました。……せやけど…飲んで語ってくれる土産話は…ホンマ好きでした。親父も…エエ顔して話してました…。そんな親父は………好きでした…。』
友田
『…ほーか…。………………………やってみるか?親父さんと同じ仕事…。』
涼介
『…正直…やれる自信はありません。普段は原チャリくらいしか乗ってませんから…。』
友田
『それは心配せんでエエ。きちんと運転のイロハから教えたる。俺ができる唯一の、親父さんへの恩返しや。自分がやりたい言うんやったら…な?』
涼介
『……。』
友田
『焦らんでエエ。考え決まったら…また電話してくれればエエ。』
涼介
『…わかりました。』
涼介は、話しを聞き終わると、友田の元を後にした。
涼介
(親父と…同じ…同じ視界…か。)
涼介は、帰宅してからも、ずっとその事ばかり考えていた。
そして…
いつの間にか眠りに就いていた。
『…ちゃん……お兄ちゃん…お兄ちゃんて‼』
涼介
『…ん…あ?』
妹・野村留奈(のむらるな)
『ご飯やで⁉今日休みやろ⁉おかんが片付かないから早よ食べやーて‼』
涼介
『あ、あぁ…』
涼介は、眠い目をこすりながら、キッチンへと向かった。
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