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「…どうしたんだ、いきなり。」
さっきから様子がおかしい。
いつも明るい霧音だが今は何かにとりつかれたかのように黙って下を向いている。
「…うれ……の。」
「…?」
「…嬉しいの…、だって前の家だったら今の状況なんて考えられなかった…。さっきの事だってそう…あの人たちなら黙って見放してた…。だから今のこの時間が嬉しくて…えぐっ…ぐすっ…。」
「お…おい、何泣いてんだよ…。」
どうしたんだ?いきなり泣き出して…
「嬉し泣きだよ…兄さん…。」
「分かった、でも泣くな…な?」
そういって俺は霧音の頭を撫でた。
…何年ぶりだろう、女の子の頭を撫でるのは。
どこか懐かしくもあり、そして、悲しいこの感じは…。
「…さん……兄さん!」
「…ん?」
「ボーッとしてないで行きましょうよ♪」
霧音はさっきとは違い、とても明るい表情て俺の手を引いていた。
…仕方ないな。
「…待てって、霧音。」
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