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 香市がまた教師に近づく。 「…ゃ、やめてっ、こうちゃん!!」  ふ、と香市の動きがとまった。ゆっくりと奏枝を振り返り、優しい笑顔になる。 「奏枝……大丈夫か?」 「こうちゃん~っ」  質問には答えずに、奏枝は泣きながら香市にすがりついた。 「よしよし。立てるか?」  奏枝は涙でぐしゃぐしゃの顔を横にふる。まだ体が震えていて力が入りそうになかった。 「じゃあ、だっこするぞ。…よっと」  いわゆるお姫さまだっこをして部室を出るが、一人残された教師は何も言わなかった。 「ふぇっ、おにっおにいちゃっ…は、なんっで、がっこに、いんのっ?」  奏枝は、香市のことをおにいちゃんとも呼ぶ。香市からの希望もあって、最近はこうちゃんに統一されつつあるがよく昔のくせが出るのだ。 「奏枝を迎えにきたの」  どうやら、迎えに来たものの、姿も見えない、電話もつながらない奏枝を探して部室の方まで来てくれたようだ。 「くるまっ?」 「そうだよ。はい、着いた」
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