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ドアを開け、奏枝は助手席にやさしく降ろされる。香市は奏枝の頭を撫でてドアを閉める。
香市もすぐに運転席に座った。
奏枝はまだまだ泣きやみそうにない。
「かな、あの先生なんて名前?」
奏枝は無言で頭をふった。
「言いたくない?でも言わないと…」
また頭をふる。
「ぅ、訴えっる、とかっ……やだっ」
しゃくりあげながら、必死に言葉を伝える。
「…どうして?」
頭を撫でながら聞く。
「…だって、訴え、たらっ、はな、話さなきゃっ…だもっ…」
「……そうだね、ごめん」
奏枝はまた頭をふる。
やっとのことで顔を上げて、香市の方を向いた。
「…こうちゃん、悪くっない。仕事帰りっ、で、来てくれたんっでしょっ?あり、ありがとっ」
ネクタイはすでに外されていたが、香市はサラリーマン風の格好をしていた。
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