Childhood

Ⅰ

「…よしよし、もう大丈夫だか……っ」

　奏枝に抱きつかれて香市は言葉を詰まらせた。

「…かな？まだ、怖い？」

　奏枝の涙はほとんどとまっていたが、まだわずかに震えているようだった。

「…かな、ちょっと…離れて？」

「やだっ…」

　頭をふって、抱きく腕に一層力を入れる。

「かな？俺も、男なんだよ？わかってる？」

「………やだ」

「……悪いけど、俺は男なの」

「……」

「怖いんなら家に帰って、おばさんに抱きつきな？」

「おっ、母さんにはっ、言わない…」

「心配かけたくないの？」

　奏枝は頷いて言う。

「泣き顔、なおるまで、こうちゃん…と、いる」

「ちゃんと泣きやんでもないのによく言うね。もう、これ言うの最後だよ？俺は、男」

「大丈夫だもんっ」

　奏枝は、男だってことくらい知ってる。と思っていた。