lost voice.

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 一年前、冬... 「桔梗(ききょう)!」 聞き慣れた声とドアが叩かれる音が、僕を覚醒させた。 「菖蒲(しょうぶ)...おはよう...」 「おはよっ! それより外、外見てみろよ!」 菖蒲に半ば無理やり起こされ窓の外を見てみると、一面銀世界になっていた。 「...キレェだねぇ...」 ぽつっと呟いた僕の首に、菖蒲はガーゼを巻き付けた。 この行為は僕達が6歳の頃から6年間、毎年冬に行われていた。 ズボラな僕は菖蒲に巻かれないとガーゼを巻いたりしないけど、菖蒲は年中無休で巻き付けている。  少年合唱団に入っている僕らにとって、“声”は命の次に大切なものだった。 .
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