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「治らないと言うことも、私に会いたがっていることも聞いてた。それなのに……僕は!」
「あッ!」
背後からドン! という強い衝撃が襲った。僕は箱ごと浮き上がってひっくり返る。きっと机を叩いたのだろう。
倒れたとき、主の顔が見えるような形になった僕は、初めて絶望に落ちた顔というものを知った。
「っごめん! 大丈夫か? ケガは?」
急いで僕を持ち上げて、体中を調べ始めた。強い衝撃ではあったけれど、大した破損はなかった。でも、僕はその事を主に言わずにそのまま調べてもらった。主があんな顔をしたことがショックなのもあるけれど、主の優しさを感じたくなっていた。
「……良かった、ケガはないようだね。って、どうしたんだ?」
僕の顔を覗き込んでくる主の顔は先ほどの悪夢のような表情はない。
「ものすごく、泣きそうな顔してる……やっぱりどこか痛めたのか?」
「違うん……で、す。僕の、お父様は、主だから……だから……」
同じようになってしまったらと、考えてしまったのだ。主が落ち込んでいる時に不謹慎だと思うけれど、でも、きっと主のお父様にも負けないだろう優しさをお持ちの主が、いつかいなくなってしまうかと思うと、胸が軋んだ。外に聞こえるくらいの音で、音盤が悲鳴をあげた。
でも、泣くことはできなかった。僕はオルゴールだから。
泣きたくても泣けない。それがどうしようもなく辛かった。
「私の気持ちになってくれようとしたんだね……ありがとう」
こんなにも優しい主を想っているのに。
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