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主を見るあげると、主も泣いていなかった。きっと僕がしている顔と同じ顔だけれど。
「主、どうして泣かないのですか?」
主は、少し戸惑って僕の頭を撫でた。
「……知ってるか? 涙って、塩の味がするんだよ」
「え!」
思わず顔が強張ってしまった。それを見て、主は吹き出して笑った。
「あはは! 可笑しいなぁもうっ!」
今まで一度も主は泣いたことはなくて、いつか主に教わった悲しかったり嬉しかったりするときに瞳から流れる雫としか知らなかったのだ。
恥ずかしくて悔しかったけれど、反面知らなかった自分を誉めた。
お陰で、主が笑顔になったのだから。
「それにね、私も泣けないから……」
「え?」
その時だった。
「―――――――――っつ!」
突如、あたりが青白い光に包まれた。
驚く間も無く、主に箱ごと抱きしめられる。
その直後、天が落ちてきたような大きな衝撃が襲い、僕の意識は暗闇の中へ消えていった。
何が起きたかわからなかった。
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