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……遠くから、音が聞こえる。 懐かしい、でもついさっきまで聞いていたようでもある唄…… ゆっくりと、目を開けてみる。眩しくて、思わず目を細めた。暖かくてやわらかい光だ。 辺りは霧のような白い光で覆われていて、はっきりと見えない。 目の前の霧の向こうに、蒼い空が見えた。僕は倒れているんだ、と気づき、起き上がろうと地面に手をついた。 驚いた僕は勢いよく起き上がって、手を見た。足を見た。体を見た。首を触り、全身を触った。 「嘘だろ……!」 動き、触り、跳ぶこともできた。僕が、今まで夢の様に憧れてきた事全てができるようになっていたんだ。 嬉しさのあまり、霧の草原に躓いて見事なまでなこけ方をした。だけど地面は綿の様に柔らかくて、痛みは少しも感じなかった。ふと、いつも足元にある音源がない事に気づく。あれは、僕の命だ。 箱がないっ! 認知した途端に怖くなって、白い地面に這いつくばって手探りで箱を捜し求めた。 死んでしまう、死んでしまう、死んでしまう! しかし、箱は見つかることはなかった。だけど、いくら経っても一向に死ぬ気配もなかった。 なんで、死なないんだ? そこで初めて、自分の体は人間そのものになっていることに気づいた。あまりの驚きに呆然とする。
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