とあるオルゴールの幸せ

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僕は目を開けた。 いつもと変わらない木組みの天井が目に入る。 優しいメロディーが流れている。 何度も聴いた、僕の鼓動。 ギチチ、と金属の擦れ合う音が背後から聞こえ始めた。 ゆっくりと視界は下へ降りていく。 体が起き上がっているのだ。 そして直立した状態になった僕は、大仰にお辞儀をする。 「おはよう」 顔をあげた先には今僕を起こした人、僕の主がいた。 「おはようございます、主」 「今日もいい天気だ」 「そうですね」 主が部屋の窓を開ける。爽やかな風が流れ込んできた。 なぜ僕が窓を開けないのかって? 僕は執事ではないから。 それ以前に、人間でもない。 僕は、オルゴールだ。
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