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主は空を見上げて大きく背伸びをした。僕にはそれが羨ましくてならない。音楽を奏でているときも、箱で寝ているときも、最初のお辞儀以外ずっと気をつけの姿勢のままなのだ。
人形なのだから肩が凝ったり腰を痛めたりすることもない。でも、ああやって全身の関節の一つ一つが伸びる感覚を、僕も味わってみたかった。
……いや、本当はそんなこと関係ない。ただ、動きたい。主のために。
オルゴールとはいえ、本当は僕だって主人より早く起きたり、窓を開けたり、寝起きのコーヒーを淹れたり食事の用意をしてあげたい。初めて会った頃からずっとそう思っていた。
叶わない事だとわかっている。
だから、今僕ができることをするしかなかった。メロディーを奏で、会話をすること。
この会話の機能はどういう仕組みになっているのか、実は僕にもわからない。いつか主にこの機能について聞いてみたことがあった。
でも主は『魂があるもの同士、会話ができるのは当たり前だろう』と言ってはぐらかされてしまった。最初は納得できなかったが今では、納得してもいいかな、なんて思っていたりする。
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