とあるオルゴールの幸せ

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はたはたと、風がカーテンを揺らした。主はまだ外の景色を眺めている。 僕の置いてある位置は窓の向かい側で、主はその間に入っているからここからでは主の顔は見えない。 それでも機嫌がいい事がわかる。主は歌っていた。僕のメロディーとハモらせて、楽しそうに。 主は時々僕のメロディーを歌ってくれる。それが僕にとって何より嬉しかった。 心地良い風に、主と僕の唄。 なんだか眠くなってきた僕は、大きくあくびをした。 「……!」 ふと、あの匂いがした。あの忌々しい、僕の天敵。 「……ん、どうかした?」 主が薄いカーテンを閉めながら振り返った。険しい顔を見られてしまった。 「なんでも……ないです」 「なんでもなくないよ、すごく嫌そうな顔をしていたよ」 「なんでもないものはなんでもないんです」 しれっとしてそっぽを向く。 「なんだと? なまいきなっ! ご主人様にちゃんと話してみなさい!」 「あ、ちょっ! 首掴まないでくださうぐぇ! ははは外れるっ! 首外れますってば!」 「正直に言うまで離さないからな!」 手加減なしで首を掴んでくる主は(鬼の)笑顔で、本気であることを悟った。 こういうときは僕が白状しないと、決まって体の一部が壊れたりしたのだ。 「わわわわっわっかりました! 白状しますから壊さないでください! か、風です!」 主はきょとんとして手を離した。
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