4人が本棚に入れています
本棚に追加
はたはたと、風がカーテンを揺らした。主はまだ外の景色を眺めている。
僕の置いてある位置は窓の向かい側で、主はその間に入っているからここからでは主の顔は見えない。
それでも機嫌がいい事がわかる。主は歌っていた。僕のメロディーとハモらせて、楽しそうに。
主は時々僕のメロディーを歌ってくれる。それが僕にとって何より嬉しかった。
心地良い風に、主と僕の唄。
なんだか眠くなってきた僕は、大きくあくびをした。
「……!」
ふと、あの匂いがした。あの忌々しい、僕の天敵。
「……ん、どうかした?」
主が薄いカーテンを閉めながら振り返った。険しい顔を見られてしまった。
「なんでも……ないです」
「なんでもなくないよ、すごく嫌そうな顔をしていたよ」
「なんでもないものはなんでもないんです」
しれっとしてそっぽを向く。
「なんだと? なまいきなっ! ご主人様にちゃんと話してみなさい!」
「あ、ちょっ! 首掴まないでくださうぐぇ! ははは外れるっ! 首外れますってば!」
「正直に言うまで離さないからな!」
手加減なしで首を掴んでくる主は(鬼の)笑顔で、本気であることを悟った。
こういうときは僕が白状しないと、決まって体の一部が壊れたりしたのだ。
「わわわわっわっかりました! 白状しますから壊さないでください! か、風です!」
主はきょとんとして手を離した。
最初のコメントを投稿しよう!