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 目を覚ますと、もう外は真っ暗で雨が降っていた。 いつの間にか音が止まってしまっていたらしい。 いつものように大仰にお辞儀をする。何もない場所に向かって。 「……主?」 僕が目を覚ますにはぜんまいを巻く必要があった。 だから傍には必ず主がいるはずだった。 でも、姿も返事もない。 「主、どこにいるんです?」 部屋は暗く、それでも時々光る雷であたりは見えた。 首の回らない、僕の限られた視界の中には主はいなかった。 「後ろに、いるんですか?」 「……」 無言でも、確かに主の呼吸は聞こえた。ほっとした。でも、どうしたのだろう? 僕が置いてある机に手を置いているのか、少し震えていることがわかった。 「ある……じ?」 様子がおかしかった。 主は今まで雷を怖がったことはなく、むしろ窓に張り付いて喜ぶくらいなのだからほかの理由だろう。 「どうか、なさったんですか?」 苦しいのか、痛いのか、悲しいのか、怯えているのか、それとも笑っているのか。 ああ、もしかしたらまた僕をからかうために黙っていて、焦っている僕を見て笑っているのかもしれない。 「あ~る~じ~? まーたからかってるんですか?」そのとき、微かに聞こえた音に思わず僕は硬直した。 「……ふふ、ばれたかぁ。もっと焦ったところが見たかったのになあ」 ははは、と後ろで笑っている主。 でも、僕は無視した。 沈黙が漂う部屋。 「……どうしたんだい?」 「それはこっちのセリフです。何を泣いているんですか、主?」 さっき聞こえたのは、確かに悲しみのこもった、主のすすり泣く声だった。 「……勘はぜんぜん当たらないくせに、そういう感覚は鋭いんだね」 「誉め言葉として受け取っておきます」 困ったように笑う主。僕は黙って真剣に主の言葉に耳を傾ける。 僕の後ろから離れるわけでもなく、主はただ黙っている。 僕を起こしたのは、寂しさを紛らわすためだったのかもしれないけれど、今こうして僕の傍にいるのは、少なくとも僕に話してくれる意思があるからだ。
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