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表通りから外れたその公園は、ベンチのほかには滑り台とブランコが申し訳程度に設置されているだけで、公園というよりホテル街の片隅の空き地、といったほうが正確かもしれなかった。
ペンキを塗り重ねてぼこぼこの肌の常夜灯に照らされたベンチに座り、僕らは缶コーヒーを啜った。
「学生か?」
「いえ。これでも一応、社会人してますよ」
「若く見えるけどな」
「みんなそう言います。背ェ小さいし、童顔だから、22には見えないって」
「なんだ。マジに若いじゃないか」
「でも納税者五年目」
「そりゃあ大したもんだ」
言って。アルマーニは飲み干した缶を傍らに置き。
懐から取り出した箱を振り。つい、と頭を覗かせた一本を噛み付いて引き抜くと、手の中で火を点けた。
風のない夜気に、オイルの匂いに混じって僕の知らないシトラスの煙がふわ…と流れ。
「吸うか?」
箱を差し出そうとするのへ首を振り、僕は、ジャケットの内ポケットからシガーケースを出して見せた。
僕が紙巻きを咥えると、アルマーニは、黙って煙草を挟んだ手を僕の前に突き出した。
「……Thanx」
彼の指先から火を貰い。
最初の煙を吐き出し、呟く。
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