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しかし窓の外を歩くには塾の敷地にある花壇に入らなければなりませんし、自慢じゃありませんがウチの地区は夜8時過ぎればみんな寝てしまうような辺鄙な田舎なんで、夜の9時頃に真っ赤な服で人が出歩いている可能性は低いはずです。
思わず私は同じように人影を目撃したK先生と顔を見合わせ、キョトンとしている他の塾生たちの前で窓を開けて外を探しました。
ですが、窓の外には誰もいません。
『これもお前の本の仕業か?』
K先生のその言葉に、私は背筋が寒くなっていくのを感じました。
それでも、やがて塾は無事に終了します。
迎えに来た親の車に乗り、私が塾での出来事を話そうとした瞬間
キキキィー!
突然、親が急ブレーキ。
と同時に目の前の団地の駐車場から猛スピードで走り去っていく乗用車。
あと少しブレーキが遅ければ私の乗る車は乗用車に側面衝突し、シートベルトをしていなかった私は大怪我をしていたかもしれません。
と、これで私の話はおしまいです。
しかし、私には未だに疑問に思う事があります。
あの乗用車はなぜ団地の狭い駐車場で飛び出す必要があったのでしょうか?
そして、全てが終わった後、箱にしまっておいたはずの小説が数ヶ月間にわたって行方不明だったのはどうしてでしょうか?
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