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「ソイツがどーかしました?」
「アタシはこういうヤツが嫌いでね」
「はぁ」
「優柔不断でハッキリしないし、それでいてどっちにも良い顔しやがる。そーいうのは罪だろう。そもそも何でこんなヤツがモテるかねー」
「チャンプには全国の少年達の夢が詰まってるんですよ」
「それにしても、気に入らねぇ」
「確かにナナさん嫌いそうですね」
でも、世の男子が皆貴女のように男らしいわけではないのですよ。
「魅力的な二人に言い寄られたらこうなっちゃうんじゃないですか?」
ナナさんは露骨に俺を睨んだ。その鋭い眼はちょっと怖い。
「サトもそういうタイプか」
「さぁ、どうでしょう。そんなオイシイシチュエーションに出くわしたことないですもん」
「まぁそらそーか。ていうか、サトは恋愛経験自体ほとんど無いんじゃないか?」
慧眼だ。お付き合いは勿論のこと、告白したことも一度もない。
「やっぱね。そんな気がした」
ナナさんは満足そうに笑うとページを捲った。
「ナナさんはどーなんですか」
「あぁ、アタシは大人の女だからね、そりゃ人並みに経験は積んでる」
ほう。
「ただね、言い寄られてオッケーしたらよ、どいつもこいつも女々しいったらありゃしねー。情けなくてすぐ袖だ」
だから、貴女が雄々しいんだってば。
それにしてもよくもまぁナナさんに告白しようと思ったものだ。外面に文句を付けるつもりはないが、内面に関しては彼女にするには些か問題アリかと。
それを差し引いても魅力的な女性だと思ったのかな。俺にはわからない。
「オイ、なんだサトてめぇ、言いたいことあんなら言ってみろ」
「いや、えーっと、せっかくナナさんを射止めたのに勿体無い事をする男もいたものだなぁー、と」
「まったくだよな」
ははは。さいで。
「まぁとにかく。
サトはこーいう場面でも男らしく決断できる男だと、アタシは信じてるよ」
ナナさんはポンポンと冴えない主人公を叩く。
「そーですね。まぁ善処したいと思います」
とは言え、やっぱりそんなシチュエーションにはならないのだろうけど。
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