第一話

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   チラチラと隣を横目に見ながら、椅子に浅く座って空飛ぶ山羊を開いた。  申し訳ないけどこの本を読むのはまた次の機会。  今はもっと大事なことがある。    俺は不躾とはわかっていながら、その横顔をまじまじと見つめる。      静かに瞬きをする度に小さな風が起きそうな程に睫毛は長く、伏し目がちな目は少しだけつり目。  朱の入った唇は薄く、口自体も小さい。  鼻筋が通り、顎までの輪郭線がシュッとしたシャープな顔立ち。  雪のように輝く肌は、もう少しで病気を疑ってしまいそうな程に白い。あの悪魔も白かったが、間違いなくそれより白い。  漆黒の長髪は流麗。艶やかなそれは手入れが行き届いているのだろう、健康そうに輝いている。癖のない真っ直ぐな黒髪。櫛はノンストップで毛先まで行くのだろうと予想する。  前髪は目の上で綺麗に切り揃えられていて、長髪ながら爽やかに見える。    凜然としたその姿は、強く俺を惹き付けた。    どうやら俺はこの方とお近づきになりたいらしい。先程無意識に歩いた我が足がそれを証明している。    まず、どうやって話し掛けようか迷っていると、なんと彼女のほうからこちらに顔を向けた。  キリッとした目鼻立ち。意思の強そうな眼。  その抜き身の日本刀のような鋭い目線が俺を突き刺す。   「何かしら」    ひどく無表情に無感動に事務的に口を開いた。  何だか心の温度が3度ぐらい下がった気がした。  少し気圧されたような形で俺は、口を開けないでいた。   「私の顔に何か付いてる?」    整ったパーツが絶妙なポジションに付いていますよ、なんて軽口はこの人の前では許されない。そんな気がして、首を横に振るぐらいしかできなかった。   「そう。出来れば気が散るから席を外して欲しい」    なかなか辛辣な物言いだが、俺がじろじろと見すぎたのが悪い。素直に反省するものの、ここは譲らない。  
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