第一話

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   少し前から六波羅とは話してみたいと思っていた。六波羅は確かに女性としても素敵だが、それ以上に人として魅力的だと思うから。  俺の周りの野郎共はそこらへん解っていない。六波羅が話題に上ると皆一様に残念そうな顔をする。    我が友人、鯔背伍右衛門かく語りき。 「六波羅? 確かに綺麗だけどー、あいつはちょっと不気味だろ。何考えてるかわかんねーし。あいつの眼は人を殺せる眼だ」  コイツもあの噂を信じてるクチだ。鯔背なんて名字のくせにコイツは全然いなせじゃない。    六波羅の魅力がわからないとは、勿体無い。  どうしたって他の女子より輝いて見えるのに。  女子高生という人種、頭を使うよりまずノリと勢いを大切にする娘が目立つ中、誰よりも思慮深く周りを見据える冷たい瞳は、魅力と言う他ない。  六波羅が他を寄せ付けないのではない。他が六波羅に近付けないのだ。    六波羅と他とではその目に映るものが全然違うのではないかと思う。  誰もがパーツを調べる中、一人だけシステムを調べているような。  人より多面的に物事を捉え、人よりずっと深いところまで考えている。    我が友人、四橋歩希かく語りき。 「六波羅さんは凄いと思います。同じクラスで行事を共にしたからわかるんですけど、誰を何処に置いてどんな仕事をさせるのが最も効率的かをすぐに見抜いていました。  六波羅さんのおかげで文化祭もノンストップ滞りなく、作業は進んだのです。前日なんかやる事無かったのですから。  皆さん怖そうにしてましたけど、やっぱり感謝してたんじゃないでしょうか」  四橋は俺の数少ない女子の友人だが、彼女も六波羅の魅力には気付いていた。    四橋の言葉は俺をなるほどと唸らせた。  六波羅にはエリザベス一世やマリア・テレジアなんかに通じるものがある。  優れた調節能力や、的確な指示能力、素早い情報処理能力等。六波羅の大きく深い器にはそういったものが揃っている。      俺が何故これ程まで六波羅について知った風な口をきくのかというと、友人の話だけではなく実は以前に面識があるのだ。いや、俺が一方的に知っていただけなので面識とは言えないな。  一方的でなかったとしても、確実に六波羅はあの時のことなど忘れているだろうが。  
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