第一話

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   1    この日、俺は悪魔に出逢った。        俺には習慣がある。  そいつは、俺が小学校三年生の時からほぼ毎週月曜日欠かさずやってきた事。  そいつは、週始めの陰鬱な月曜日を彩る唯一の楽しみで、今や俺にとってかけがえのない存在。  そいつは、幼い俺に、友情や努力や勝利の大切さを熱く教えてくれた。     「ちょっとちょっと! そこのお兄さん」    まさかその習慣のせいでこんなことになろうとは。    俺は乗っていたママチャリのブレーキを握った。 『ちょっとちょっと! そこのお兄さん』  およそいい予感のしないこのフレーズに呼び止められ、果たして振り向いて大丈夫なものか。俺は思案した。    俺のイメージではこういったセリフを吐くのは往々にして、柄の良くないいわゆる"ゴロツキ"ないし"ヤンキー"。そういった奴らは、こうして何やかんやいちゃもんふっかけてくるのだろうか。    だとしたら当然関わってはいけない。振り向きもせずに渾身の力でペダルを踏み出すべきだ。    だが、いや、待てよ。  ここは平和が取り柄の田舎町。そりゃ不良の一人や二人いるだろうが、今俺がいるのは夕闇せまる児童公園。  奴等は今頃、ゲーセンか麻雀か、もしくは来たるべき夜の世界にむけて一眠りしているか。  なんにせよ、こんな時間にこんな所でそんな奴らには会うまい。    ここまでの思案を三秒で終えた俺は『振り向いてみよう』という結論に至った。
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