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この日、俺は悪魔に出逢った。
俺には習慣がある。
そいつは、俺が小学校三年生の時からほぼ毎週月曜日欠かさずやってきた事。
そいつは、週始めの陰鬱な月曜日を彩る唯一の楽しみで、今や俺にとってかけがえのない存在。
そいつは、幼い俺に、友情や努力や勝利の大切さを熱く教えてくれた。
「ちょっとちょっと! そこのお兄さん」
まさかその習慣のせいでこんなことになろうとは。
俺は乗っていたママチャリのブレーキを握った。
『ちょっとちょっと! そこのお兄さん』
およそいい予感のしないこのフレーズに呼び止められ、果たして振り向いて大丈夫なものか。俺は思案した。
俺のイメージではこういったセリフを吐くのは往々にして、柄の良くないいわゆる"ゴロツキ"ないし"ヤンキー"。そういった奴らは、こうして何やかんやいちゃもんふっかけてくるのだろうか。
だとしたら当然関わってはいけない。振り向きもせずに渾身の力でペダルを踏み出すべきだ。
だが、いや、待てよ。
ここは平和が取り柄の田舎町。そりゃ不良の一人や二人いるだろうが、今俺がいるのは夕闇せまる児童公園。
奴等は今頃、ゲーセンか麻雀か、もしくは来たるべき夜の世界にむけて一眠りしているか。
なんにせよ、こんな時間にこんな所でそんな奴らには会うまい。
ここまでの思案を三秒で終えた俺は『振り向いてみよう』という結論に至った。
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