第一話

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   足をペダルから離し、地面に着ける。首をくるりと回し四時の方向に視線を向けた。    まず目に入ったのはオレンジ色の光。空を茜色に染める太陽が眩しくて目を細める。  目の上に手を翳したからか、陽光に眼が馴れたのか、次第に姿を現す声の主。    その人が女性、しかも女子高生だということはすぐにわかった。やや短めに穿いている赤いチェックのスカートが、俺が通う高校の女子の制服だからだ。  白いワイシャツと胸元の赤いリボンも見慣れたものだ。  ただその上から羽織っている、濃い灰色にピンクのラインが入ったジャージは、もちろん学校指定のモノだったりはしない。    それから特筆すべきは首から上だ。お顔立ちがお美しいだとかドブスだとかそういうことじゃない。    まずその口の端にくわえられた煙草。この国では未成年の喫煙は罪になる。女子高生が嗜むモノではない。    そしてその人がベンチに座っているにも関わらず、半キャップのゴーグル付きヘルメットを被っていたのもおかしな点だ。  ベンチの傍らに原付が駐車してある。オレンジと白のお洒落なそれは、俺が知る数少ないバイク、スーパーカブだ。  確か俺の記憶が正しければ、うちの高校は免許証の取得を校則で禁止しているはず。    更に、そのメットの下から覗く髪の毛は、夕日のせいだけでなく金色に染まっている。  シャギーの入ったその金色は一番長い所で肩あたり、とやや短めで活発そうな印象を受ける。  俺の記憶が正しければとか言うまでもなく、金髪は校則で禁止されている。    振り向いてみれば、なんだやっぱりヤンキーじゃないか。俺は眉をひそめた。  
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