30人が本棚に入れています
本棚に追加
俺も楽しい。まさか自転車をこぐ事をこれ程までに楽しいと感じることが出来るとは。
彼女のおかげだろう。彼女とこうして競っていることが、俺の心をこんなにも踊らせているのだ。
彼女は間違いなく今までで最高の敵。好敵手と思ってもいいだろうか。
彼女にだったら負けても腹から笑えそうだ。そんな気がする。
でも、いや、だからこそ、勝ちたい!
俺はここ数年間になかった勝利への執着を見せた。
俺の気迫はスピードとなって表れる。気持ちが良いほどにペダルが回って、チャリンコらしからぬ速度を生み出している気がする。
風と一つ。いや、俺は今、風なんじゃないだろうか。そんな気さえする。
青戸号は少しずつ彼女と差をつけていく。半馬身の差がついても、その差は開き続ける。今や彼女の前輪が少ししか見えない。
遂に彼女が視界の端から消え失せた。
前へ、ひたすら前へ!
最後の一本道をただ真っ直ぐに貫いて、突き刺さるように。
俺は公園の入り口、二本のポールの間を走り抜けた。
最初のコメントを投稿しよう!