第一話

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  「いやぁでもやっぱ美人だわ」 「それは認める」  鯔背は腕を組み、ウンウンと何度も頷く。 「俺の好みとは違うけど六波羅は綺麗だよ」  鯔背の好み、フッと懐かしい顔が浮かんだ。青いアイツ。六波羅と少し似たとこがあると、俺は思うけど。   「でもやっぱコエーよぉ」  ぶるぶると震える真似をする鯔背。コイツは六波羅の例の噂を信じてるからな。  別に六波羅を知っているわけではないが、何と無く口を挟みたくなる。   「アイツあんま怖くねーよ。むしろちょっと面白い奴な気がする」 「何それ」 「いや、勘だけど」  鯔背は鼻で笑い、ヤングチャンプを再び読み始めた。    脅しを受けているにも関わらず、どうやら自分が六波羅を気にしているようだと自覚する。  明日から登校日。もしかしたら会うかもしれない。  もう少し六波羅について知りたいと思った。     「アホ面見せんな」  言われて我に返る。俺が物思いに耽っていると、鯔背は決まってこう言うのだ。鯔背には言われたくない台詞である。   「なんでもない。あ、湯貸して」 「湯? カップラーメン?」 「ちげーよ。風呂借りるぞって」 「あぁ、好きにしろ」    俺は立ち上がる。  大した気もつかわず風呂を借りるような間柄。こういうのを気の置けない友人と呼ぶのだろう。    明日はクラス替えの発表だ。コイツと同じクラスなら、まぁきっと笑うのに事欠かない一年になるだろ。  そう思いながらも、俺は憎まれ口を叩く。   「お前と違うクラスになることを願うよ」 「切にな」    俺は笑いながらゴミ箱の扉を開いた。      ふと思った。六波羅とは同じクラスになれるだろうか。
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