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「いやぁでもやっぱ美人だわ」
「それは認める」
鯔背は腕を組み、ウンウンと何度も頷く。
「俺の好みとは違うけど六波羅は綺麗だよ」
鯔背の好み、フッと懐かしい顔が浮かんだ。青いアイツ。六波羅と少し似たとこがあると、俺は思うけど。
「でもやっぱコエーよぉ」
ぶるぶると震える真似をする鯔背。コイツは六波羅の例の噂を信じてるからな。
別に六波羅を知っているわけではないが、何と無く口を挟みたくなる。
「アイツあんま怖くねーよ。むしろちょっと面白い奴な気がする」
「何それ」
「いや、勘だけど」
鯔背は鼻で笑い、ヤングチャンプを再び読み始めた。
脅しを受けているにも関わらず、どうやら自分が六波羅を気にしているようだと自覚する。
明日から登校日。もしかしたら会うかもしれない。
もう少し六波羅について知りたいと思った。
「アホ面見せんな」
言われて我に返る。俺が物思いに耽っていると、鯔背は決まってこう言うのだ。鯔背には言われたくない台詞である。
「なんでもない。あ、湯貸して」
「湯? カップラーメン?」
「ちげーよ。風呂借りるぞって」
「あぁ、好きにしろ」
俺は立ち上がる。
大した気もつかわず風呂を借りるような間柄。こういうのを気の置けない友人と呼ぶのだろう。
明日はクラス替えの発表だ。コイツと同じクラスなら、まぁきっと笑うのに事欠かない一年になるだろ。
そう思いながらも、俺は憎まれ口を叩く。
「お前と違うクラスになることを願うよ」
「切にな」
俺は笑いながらゴミ箱の扉を開いた。
ふと思った。六波羅とは同じクラスになれるだろうか。
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