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「まぁいいんだ。そんなことは。早くチャンプを」
俺は袋からチャンプを取り出した。表紙は今一番の稼ぎ頭のマンガだ。
「俺もまだ読んでないのに」
「ちっちぇーこと言うなよなー。なんなら音読してやろうか?」
「結構です」
「さーいですかっ」
そう言うと嬉しそうにチャンプを受け取り満面の笑顔。
「毎週コイツがアタシの動力源だ」
ページを開き早速読み始める。後でゆっくり読みたいから中身は見ないようにする。
「合併号で出ない週の月曜日は終わってるよな」
チャンプから目を離さずに言う。それには激しく同意する。
それからその人は早くもチャンプに夢中になり、黙々とページを進めていった。
漫画を読んでるのを邪魔するってのは禁忌だと俺は思っている。故に俺は手持ちぶさたとなり、公園を眺め、空を眺め、隣の女ヤンキーを眺めた。
何故かは知らんが依然としてメットは着けたまま。まぁそれはいいとして、その下に見えるお顔立ちが意外なほど整っていることに気が付いた。
鼻はそれほど高いってわけじゃないのだが、控え目で日本人の可愛らしさがある。
目はやや大きめで瞳はブラウン。少し眠たげなのが気になるがそれも魅力的に見えなくもない。
大きすぎず小さすぎでもなく、形の良い唇はどこか扇情的な色香を放っている。
意外なことに耳は綺麗なもんで、耳たぶに穴が空いていたりはしなかった。
大体にして顔が小さく輪郭が綺麗なことはすぐにわかっていた。
肌が陶器のように白く、それでいて健康的。これほど金髪が似合うのは美白のせいもあるのだろう。
総じてその人は綺麗だったのだ。
沈み行く夕日が、その人を名残惜しそうに茜色に染めていた。金髪をきらめかせながら、チャンプのコマを目で追っ掛ける姿に、見とれなかったと言えば嘘になる。
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