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「そんで、オマエさんは、二年か」
ナナさんはさして興味なさそうに聞いてきた。
「そーです。明後日から二年生」
そう。明日で短い春休みは終了し、明後日からは新二年生として学校生活が幕を開ける。こうやってフラフラしてられる日々も終わってしまうのだ。
「ナナさんは三年ですよね?」
「そー。THE・受験生てカンジ」
「こんなとこでチャンプ読んでていいんですか?」
ナナさんは俺の言葉にやっと顔を上げた。
「おいサト、チャンプに歳はカンケーねー。少年の心がありゃ、みんな大好き週刊少年チャンプ。受験とかそんなん、全然カンケーねー」
言い切った。
そして俺は拍手。賛同の意を拍手で表す。まったくもってそのとおりだ。
「少年? ナナさん女じゃん」という突っ込みはしない。だって実際、ナナさんが少年の心を持っているか、否か。持っているだろう。俺よりずっと男らしいし。
「ってナナさん、もう三つ読み終わってるじゃないですか」
「だからなんだい?」
「三つ読んだら返すって」
再びナナさんは顔をこちらに向ける。少し眉をひそめて不機嫌そうだ。
「チャンプ読者たるもの有名な作品だけかいつまんで読むようなミーハーな真似はすること勿れ」
俺はぐっと言葉に詰まる。
それから再び手を叩き合わせた。ナナさんは、生粋のチャンプ読者だ。
俺は半ば呆れながら言ってやった。
「……お気の済むまで読めばいいですよ」
ナナさんは小さく微笑んで見せるとまたチャンプの世界にのめり込んでいった。
最初から全部読むつもりだったんじゃないか。まったく女ってのは強かだ。
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