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法術
近頃世間に不穏な噂が拡がりつつある事は知っていた。
見た事も無い獣に人々が襲われるという…
原因の一端は『あの事件』以来発生している異常磁気による生態系の変化が考えられる様だ。
コロニー全体を覆う異常磁気は我ら人間が使用する電磁系機械をことごとく使用不能にしてしまい、現在も都市機能は完全に麻痺している。
この様な状況下で唯一頼りになるのは人の力のみであり、
今、我らの眼前で牙を剥き鋭利な巨爪で地を掴み正に飛び掛からんとしている謎の獣の様な輩に対峙するのは我らヴァイパーの仕事の一つ。
「回り込む。援護してくれ!」
黙したまま頷き地から剣を切り上げ牽制するダーク・アイの背後から効率的なポジショニングに成功、剣撃を加える。
中々速い。渾身の一閃だったが僅かに逸らされた。傷は浅い。
―一瞬、
右頬に熱気を感じる。振り切った剣の遠心力に任せ咄嗟に身を屈める。空を切る間に残った髪の一部の焼け焦げた匂いが鼻に突く。
「あ~ら、ザンネン☆避けられちゃったぁw」
厄介な奴に出くわしたものだ。悪知恵が働く分、ある意味獣共などより質が悪い。
「アナクロなチャンバラ屋さん達、お務めゴクローサン♪
獲物は頂いてくぜ!☆」
緊張感に欠ける不快な軽口を叩く男は、手にした錫杖を振りかざし再び身構える。
2撃目!
身を翻した我らの間合いに居た獣に焔の槍と化したその業火は直撃し、巨体を貫き激しく燃え盛ると瞬く間に対象を灰と化す。
法術師。相変わらず凄まじい、そして悪夢の如き業師…。
「コイツにゃたっぷりと賞金が積まれてるんだ♪ボロいぜ!笑いが止まんねぇwww」
せせら笑いを浮かべ立ち去ろうとする男の喉元に向けた刀剣の切っ先が鈍い光を放つ。
「ふん、やってくれるな。このまま黙って帰すと思うのか。」
逃がしはしない。
この男、悪名高きシーフ(盗賊)法術師・紅のアンディ。
賞金首だ。
「俺が何で今迄お縄につかなかったのかわかるかい?ソイツをこれからタップリ教え込んでやんぜ♪」
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