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密林
―青く澄んだ森の奥深く、静寂に包まれたその一帯だけは明らかに周囲の様子とは異なっていた。
不快な冷気が立ち込め、葉を落した木々からは生気がまるで感じられない。
この感覚には覚えがある。
『奴ら』が現れた。
「コードネーム・フェンサー2より本部へ。
間違いない、『Matter』が発現した。第一種警戒態勢を要請する!」
ふと目をやると木の幹には鋭利な刃痕が二条、
そう、“あの日”と同じ様にその姿を晒していた
嬉しいぞ。
全身が凍てつく様な恐怖に包まれていながら、そんな不思議な感情も同時に沸き起こっていた。
世に云う「武者震い」というモノを経験したのは、この時が初めてであったかもしれない。
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