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剣士
遥か辺境の紛争地域へ傭兵として派遣されていたハンターギルド団の中から、最近著しく頭角を現してきた剣士が居るという噂は聞いていた。
あまり気乗りはしなかったがギルド側の強い勧めもあり、このミッションでは初めてパートナーが付いている。
コードネーム「ダークアイ」。
辺境の戦線ではたった一人で敵の布陣の突破口を開く大きな戦果を上げていたという。
それ程大きくもない体躯と、ほぼ無口でおよそ荒くれ者ハンターには似付かわしくない風貌から恐らくこの者を我ら『ヴァイパーズ』だと一目で認識出来る者は居ないであろう。
だがこの者をパートナーとして了承したのには理由があった。
この男の使う剣技。
どういった理屈かは知らぬが、奴が携える刀剣を振るう際に衝撃波などとは明らかに異なる種類の『輝く刃』が見て取れた。
「アレ」には見覚えがあった。
いや、正確には“よく似ていた”と言うべきか。
エネルギー生命体『Matter』。奴らは憑依・寄生した肉体を媒介に、宿主の生命力を消費して特殊な技を繰り出し攻撃を仕掛けてくる。
『光剣・サイファ』と名付けられた技…アレを避ける術を我ら人間は持たない。
物質を構成する最小単位・分子レベルでの破壊をもたらすあの技の前では、人間の浅知恵が作り出した如何なる障壁もその意味を成さない。
その様な技を、何故この男は使えるのか。
興味がある。この男には一体何が秘められているのか。
「行こうか、相棒。」
黙したまま頷く『ダークアイ』のその眼光には強い意志の力を感じる。
この男の目は死んではいない様だ。
死を告げる使者『Matter』に対峙するに相応しいその眼差しは、然程嫌いではない。
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